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「戻り正月」のすすめ
ある日テレビを見ていた。
名前は忘れたが酒豪の名人落語家の話だ。
その落語家のお酒の飲み方が実に粋で良いのだ。
まず蕎麦屋で人肌のコップ酒を三杯一気に飲み干すと次は升酒で二杯。
塩を舐め舐め味わいながらゆっくり飲む。
それを皮切りにあちこちの店をはしごして飲み歩くのだそうだ。
いいね~~。粋な飲み方だね~。僕もお酒は大好きだ。
でも昼間から飲む事は正月以外に無い。
なんだか罪悪感があるのと1日が終わってしまうから。
一度昼間からお酒を飲んで酔っぱらってみたいものだ。
しかし気が引ける。
時々正月があればいいのに。勝手に作るか。国民の祝日は国が勝手に作っているのだから自分でも一日位好き勝手に作ってもいいだろう。
そこで一年に一日だけ好きな日に朝からお酒を飲んでも良い自分のためだけの祝日を作る事にした。
その祝日の名前を「戻り正月」と名付け、次の日蕎麦屋の開店を待って浮き浮きして家を出た。
「酒をお願いします。コップでね。それと人肌でね。ひ、と、は、だ、ね」。
一気に飲み干す。間髪入れず「もう一杯お願いします。人肌ね」それも一気に飲み干し「もう一杯」。
それ次は升酒だ。「お塩もちょうだいね。お、し、お」。
名人落語家を完璧に真似をしてみる。塩をナメナメちびりちびり」蕎麦屋の主人もおかしな客が来たとこっちを見ている。いいのいいの。今日は旗日だから。戻り正月だから。二杯の熱燗を飲み終わる頃にはすっかりいい気分だ。よし次。店を出た。
次に仲良しシェフのやっているフランス料理店に向かう。
「ラ・プラージュ」森戸海岸に面した最高の立地にある店だ。
「あれジンペーさん、どうしたの昼間から酔っぱらって」
自分だけの祝日「戻り正月」の事を話すと。
「正月じゃ~仕方ないね~」と笑って頼んだワインの他におつまみをサービスで作ってくれた。その店にどれくらいいたのか記憶が曖昧だが、後日オーナーシェフの田中さんに話を聞くと「家とは反対方向にフラフラ歩いて行ったよ」と面白がっていた。
その後も色々面白い事があったがそれはまた今度。
さて前置きが長くなったが、その時から40年近く、毎年「戻り正月」をやっている。
今年も一昨日やった。家内が実家に里帰りしていたのでチャンスだった。
戻り正月の前日からなんとなくお正月っぽい料理を用意して戻り正月の朝、
「明けましておめでとうございます~」
と言って日本酒を飲み始めた。
「いいな~戻り正月」
世間の人は学校や会社に行き普段どうりの日を過ごしているのに僕だけお正月。
僕だけの「戻り~正月~」。
刺身諸々つついてお銚子2本飲んでお出かけしましょうかね~。
昼近く、ほろ酔いで野毛の飲み屋街に繰り出す。
最初に行ったのが中華屋。
餃子をつまみに紹興酒。
次は居酒屋2軒。
結局3軒梯子してニコニコヨロヨロでご帰宅。
幸せな戻り正月を過ごしたのでした。
そして思うのでした。
「あ~~また早く来ないかな~お正月」
あ。半年後だ。
嬉しい。
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